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2005/03/08

後藤勝『トーキョーワッショイ!~FC東京 99-04 REPLAY~』(双葉社)読了

元来ブッキッシュな人間なので、サッカーをスタジアムで見るようになっても、それだけでは飽き足らず、サッカーについていろんな人の文章を読みたい。そんなことで本やら雑誌やら、めったやたらと読んでいた。その中で、『後藤勝』の名前をチェックするようになったのは、サッカー批評の、ティム・パークス『熱狂のシーズン ヴェローナFCを追いかけて』(白水社)の書評にことよせて、レアル・マドリー戦の時のFC東京のゴール裏に触れていたコラムだったと思う。つまり、ゴール裏の生態について書いて違和感がない文章ということだ(バークスはもちろん買った)。日本の活字メディアには、まだあんまりいないのでね、こういう文章が書ける人。普段は記者席で観戦している人が、サポーターやウルトラにインタビューして書いている本ならあるけども(例えば小郷永顕『スタジアムライフ』(フィールドワイ))、そういうのを読んでも、後藤さんのいわゆる「スタジアムに社会性を見出し、日々自らを位置づけていく行為」が、一般の人から見てどれほど奇異に映るか思い知らされるだけであることが多い。もちろん、後藤さんは、味の素スタジアムのゴール裏やバックスタンドに普通にいて、FC東京を愛していて、ぼくたちあたしたちと共に熱狂と悲嘆を心の底から体験している、いわば隣にいる人なわけで(実は昨年のスペインツアーで一緒だったので、一緒にごはん食べたりもしてるのに、その時は、この冗談ずきなユーモラスな青年が、自分がチェックしているライターの後藤勝さんであるとは思いもよらなかったのである。だってあだ名しか知らないしさ)
『トーキョーワッショイ!』は、FC東京のファン、サポーターにとっては、自分の体験、自分がFC東京との関わりあいの中で体験した喜びや悲しみを、そっと、優しく、なぞってくれているような、自分の過去を追体験しているような、不思議な本である。サッカーというのは単純でプリミティブな情動を呼覚ますものらしく、同じ場所で、同じ体験をして、同じ気持ちになる、という共感が実に多い。その上で、後藤さんはサポーターとしての惑溺をきちんと冷静に言語化し解説できる稀有な資質を持っている。いみじくも今週号のサッカーマガジンで、えのきどいちろうさんは、おそらくそのあたりを『「酔いつつ醒め、醒めつつ酔う」感覚が独特の味を加えている』と表現されていた。最近東京を見るようになった人も、昔からの人も、最近ちょっとスタジアムに行くのがおっくうな人にも、読んで欲しいな。
アマラオについての記述はもちろん、藤山の健気さに泣いた。

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