小宮良之『RUN』
福田健二は2002年に見た。2002年、東京での彼の戦績はリーグ戦21試合2得点である。途中出場が多かったとはいえ、ストライカーとしてはいかにも物足りない数字である。
その2得点を、くっきりと覚えている。
ひとつは磐田スタジアム、6-1で虐殺された試合。加地くんの低いクロスに、ニアで合わせてくれた。あの1点は勇気をくれたなあ。6-0と6-1では大違いってやつだよ。
もう一点は、もはや既に伝説といっていい、ホーム最終戦浦和戦のVゴール、宮沢のフリーキックがポストに直撃、走りこんだ福田が決めてそのままユニ脱ぎ溝落ち、弾幕で助かって客席に飛び込んだ、あれだあれ。
あのVゴールだけで、福田は東京のサポーターに未だに愛されているし、語られているし、南米で、そしてヨーロッパで戦っている福田を、ぼくたちあたしたちはずっと気にかけ、出場したりゴールしたりすると喜んだりしているわけである。あのVゴールの時以外の、チャンスで決めきれず、眉間に縦皺よせて苦悩する福田の顔の記憶は時と共に薄れて行き、よかった時の方だけ記憶に残るんだから、福田も果報なことだ。
それは何より、福田が熱いやつで、サッカーに全霊をかけているのが伝わってくるからなんだろう。この本は、福田の生きる姿勢や、彼を取り巻く人々が、その熱い魂に巻き込まれていくところを稠密に描いている。
それにしても、福田の奥さんもすごいな。どんだけ包容力があるんだろうな。強いひとなんだろうな。
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